ディスクロードが普及してからホイールの固定方式はスルーアクスルが一般的になりました。
スルーアクスルはその高い剛性と取り付けの確実さがメリットではありますが、抜き差しに工具が必要だったり、締め付け度合がわかりにくかったり、そもそも時間がかかったりとデメリットもありました。
そこでフランスのホイールメーカー「MAVIC(マビック)」が提唱した規格が「スピードリリース」です。
スピードリリースはそれに対応したフレームである必要がありますが、スルーアクスルを完全に抜かなくても脱着できるのがメリットです。
今回インプレするマビック純正のスピードリリースアクスルは、工具レス、トルク管理不要で脱着ができ、スピードリリースをさらに便利に運用できるアイテムです。
早速紹介していきましょう。
スピードリリース規格とは?
スピードリリースはマビックが提唱するスルーアクスルの規格です。
スルーアクスル全長:フロント100mm、リア142mm、リア148mm(ブースト規格)
スルーアクスルねじ径:12mm ピッチ1.0
スピードリリースに対応したフレームは上の写真のようにアクスルを受ける穴の片側が切り欠かれています。
まるでクイックリリースのフレームのようですね。この切り欠きのおかげでスルーアクスルを抜かなくてもホイールが脱着できるようになるのです。
スピードリリースはフレーム側に依存するため、対応しているフレームが必要です。
スピードリリースに対応しているフレームを製造するメーカー
- キャノンデール(米)
- LOOK(仏)
- ラピエール(仏)
- ウィリエール(仏) etc…
マビックと仲の良いメーカーや同国のフランスメーカーに採用されていますね。
ノーマルのスルーアクスル規格のフレームにスピードリリースアクスルを買っても使えないのでご注意を!
マビック純正 スピードリリース スルーアクスル インプレッション
外観チェック
さっそく本題のマビック純正スルーアクスルのインプレです。
一般的なスルーアクスルは本当にただの棒と言った感じなのですが、マビックのスルーアクスルは結構凝った作りになっています。アクスル軸の一部がレッドアルマイトだったりして無駄にカッコいいのは、ホイールのスポークを一本だけ黄色にしちゃうおしゃれ泥棒のマビックさんならではです。
ラチェットレバー
通常のスルーアクスルは六角レンチなどを用いて締め付けるものが多いですが、マビックのスピードリリースアクスルにはレバーが付いており、工具を使わずにスルーアクスルの締め付け、解放が可能です。
後述しますがラチェットレバーの名の通り、ある程度のトルクをかけるとレバーが滑り適切なトルクで締め付けることが可能になっています。
抜け止めリング
アクスル中間部にある真鍮っぽいCリングはスルーアクスルの抜け止めリングです。
スピードリリースは構造上スルーアクスルを全部抜く必要がないので、一度ハブに差し込むとこのCリングがハブの中で突っ張り、力をかけて意図的に引き抜かないと抜けなくなる仕組みになっています。
そのためスピードリリースは抜かずにホイールにつけっぱなしで運用するのが基本です。
輪行や車載時に忘れる心配がなさそうで良いですね。
スピードリリース脱着部
赤い部分がスピードリリースの脱着部です。アクスルの軽量化をするためか、抜ける部分をわかりやすくするためかアルミ製のアルマイト仕上げでできています。
一部細くなっている部分と先述したフレーム側の切り欠きを合わせるとホイールを抜くことができます。
無駄にカッコいいので所有欲あふれるアクスルです(笑)
重量チェック
気になる重さをはかってみましょう。
フロント側
フロント側のアクスル重量は43gでした。
構造が複雑ですがレバーを樹脂製にしたりアルミパーツを使用したりと凝った作りのおかげでそんなに重くありません。
僕の乗っているLOOKの完成車に純正で付属して来た六角レンチで占めるタイプのスルーアクスルは30gだったので、1gでも軽くしたい場合は完成車付属品のほうがいいかも。(Willierの高級モデルは最初から今回紹介しているマビック製が付属しているようです)
レバー付きのほうが13g差を覆すくらい使いやすいですが(笑)
リア側
リア側のアクスル重量は51gでした。
黒い軸部分の長さ以外は共通設計なので、単純に軸長分だけ思い印象です。思えばしっかり閉まるカンパやDT SWISSのクイックリリースレバーもこれくらい重量がありましたから、はっきり言ってアクスルレバーでリムとディスクの重量さはほぼないと言っていいですね。
ギミックについて
御覧の通りスプリングが入っていて軸がスライドします。これによりホイールが抜ける適切な部分までアクスルを引き抜くことができるようになっています。
マビック自体はこの機構をインデックス機構と呼んでいます。結構凝った作りですね。
スピードリリースの使い方
それでは取り付けてみましょう!
STEP1:ホイールへ取り付け
まず通常のスルーアクスルと同じようにホイールにアクスルを差し込みます。
Cリングのところまで来るといったん引っ掛かりを感じると思いますが、そのまま強く押し込んでください。
入りました。
レバーを少し引くと先ほどのインデックス機構が働きカチッと引き抜かれたまま止まります。これで取り付け準備が完了。
STEP2: ホイールへの取り付け
取付の方法はリムブレーキの時のクイックリリースレバーと同じようにアクスルを付けたままホイールをしたから差し込みます。
フレームに割りが入っているのでアクスルがあってもそのまま入りますし、インデックス機構で軸が固定されているので差し込み安いです。
レバーを押し込んでインデックス機構を戻し、時計回りに締め込んでアクスルを固定します。
しっかり押し込んであれば軸を回すだけでくるくると締まっていくので、うまく回せない場合は無理をせずレバーを押し込むところからやり直しましょう。
ある程度締め込むと、トルクレンチが上限トルクに達した時のような「カチンッ」という音と共にレバーが空回りします。
女性の方にはちょっとカチッさせるのが大変かもしれない硬さですが、思い切っていきましょう。
これはスピードリリースレバーに内臓されたトルクコントロールシステムによるもので、誰も確実に適切なトルクで締め付けられるようになっています。工具レスで適正トルクが出せるので安心感も段違いですね。
締め込んだあともラチェット機構をカチカチさせていけば、レバーを好きな位置で止めることができます。上の写真のようにカッコいいフォークやチェーンステーに添わせるとカッコいいですよ。
ということで取り付け完了!
工具を不要で楽なのに適切なトルクで締められる安心感は素敵!
今回スルーアクスルを取り付けたホイールは軽量アルミディスクホイールのALEXRIM RXD2です。↓
STEP3:取り外しは逆の手順で
取り外しは取り付けと逆の手順で行います。コツは引き抜く際もインデックス機構をカチッと確実に引くことです。
走行、運用インプレッション
走行フィーリングに変化なし
まぁ当たり前ですがスルーアクスルが変わった程度で走りが良くなった!なんてことはなく六角レンチタイプと全く違いは感じません。
クイックリリースがスキュワーになったら剛性アップを感じるライダーは多いですが、スルーアクスルの固定機構は変わらないので違いはありません(笑)
ただし、トルクコントロールシステム(ラチェット機構)のおかげで、マビックお墨付きの適正トルクで締め付けられているという事にはどことなく安心感を感じます。
まだパンクもしていませんが出先の修理時に工具が不要かつ適切な締め付け管理ができる点は良いですね。出先でパンクをした時は修理のストレスで仕事がいい加減になったりしがちなので、製品側で管理してくれるのは良いことです。
輪行、車載も楽ちん
特にフロントの脱着が速いので車載や輪行の際も安心です。
またCリングによるスルーアクスルの抜け止め機構により、意図的にスルーアクスルを引き抜かない限りアクスルが外れることがありません。
これにより輪行や車載の事前や事後のパッキング時に、抜いたスルーアクスルを入れ忘れるなどと言ったトラブルが起きないのは隠されたメリットかと思います。
反面、毎回引き抜いたりするのは面倒なので、僕のようにグラベルとロードでホイールを使い分けるような場合はホイールごとにスルーアクスルを用意したくなります。
まぁそのために今回このマビック純正アクスルを購入したんですけど(笑)
作りもよく、非常に満足度高いアクスルです
まさに影の功労者という感じ。あれば大変便利にロードバイクが運用できると思います。
大前提としてスピードリリース規格のフレームである必要がありますが、付属のスルーアクスルが六角レンチタイプであればマビックの純正品を購入するメリットは大いにあると思いますよ!
個人的にはグラベルホイール用にもう1セット欲しい…
ちなみにネットでは前後別売りです。